基本情報
- 原産地:中南米(ペルーやメキシコなど熱帯アメリカ地域)
- 分類:ヒルガオ科サツマイモ属
- 学名:Ipomoea batatas
- 英名:Sweet potato(スイートポテト)
- 和名:薩摩芋(さつまいも)、甘藷(かんしょ)、唐芋(からいも)
- 主な品種:
- 紅東(ベニアズマ):ホクホク系。育てやすく家庭菜園の定番
- 紅はるか:ねっとり系。甘味が強く人気急上昇
- 安納芋:ねっとり系。焼き芋向けの極甘品種
- 鳴門金時(金時):ホクホク系。関西で人気
- 紫芋(パープルスイートロードなど):アントシアニン豊富で色鮮やか
- 黄金千貫(こがねせんがん):焼酎用としても使われる白肉品種
- 主な産地(日本):
- 鹿児島県(全国1位の生産量)
- 茨城県、千葉県、宮崎県、徳島県など
- 発芽適温:20〜30℃
- 生育適温:25〜30℃(高温を好み、寒さに弱い)
- 適正土壌pH:5.5〜6.0(弱酸性が望ましい)
- 苗の植え付け時期:4月中旬〜5月中旬(地域によって変動)
- 収穫時期:8月下旬〜11月上旬(栽培日数:約110〜150日)
- 連作障害:出にくい(同じ場所で2〜3年連作可能)
ポイント補足
- さつまいもは熱帯性植物で、寒さに非常に弱いため、霜にあたる前に収穫を終えることが重要です。
- 湿度の高い環境よりも、乾燥気味の気候と水はけの良い土壌を好みます。
- 種ではなく、「切り苗(つるの一部)」から育てるのが特徴です。
栽培のポイント
- 肥料は控えめにする
→ 肥料が多いと「つるぼけ(つるばかり伸びて芋が太らない)」が起こりやすくなります。元肥を少量に抑え、基本的に追肥は不要です。 - 乾燥気味で水はけのよい土を好む
→ 土が湿りすぎると根腐れや病気の原因になります。粘土質の畑では改良が必要です。 - 高畝にする
→ 排水性を良くし、芋が地中深くまで伸びられるようにします。畝幅60cm、高さ30cm程度が目安です。 - 黒マルチを使用する
→ 地温上昇、雑草防止、不定根(つるの節から出る不要な根)の発生防止に有効です。畝の表面をマルチフィルムで覆います。 - 蔓返し(つる返し)を定期的に行う
→ つるが地面に触れるとそこから不定根が出て栄養が分散されてしまいます。つるを持ち上げて元に戻すことで、芋の肥大を促します。 - 雑草対策はしっかりと
→ 初期は特につるが地面を覆うまでの間に雑草が生えやすく、栄養や光を奪われます。黒マルチや防草シートを活用しましょう。 - 霜が降りる前に収穫する
→ 霜に当たると芋が腐敗してしまいます。寒冷地では特に注意が必要です。早めの収穫を心がけましょう。 - 広めのスペースを確保する
→ つるが四方に広がるため、ある程度の面積が必要です。プランター栽培も可能ですが、収量は限られます。
一言アドバイス
さつまいもは「ほったらかしでも育つ野菜」と言われますが、つるぼけ対策と雑草管理だけは手を抜けません。あとはシンプルで丈夫な頼れる作物です。
由来・歴史
さつまいもは、中南米の熱帯地域、現在のペルーやメキシコを原産地とする植物で、紀元前1000年頃にはすでに人の手によって栽培されていたとされています。中南米では主食の一部として扱われ、古代から人々の暮らしを支えてきた作物です。
15世紀、大航海時代の探検家コロンブスによってアメリカ大陸からヨーロッパへと持ち込まれると、さつまいもは急速に世界へ広まりました。スペインやポルトガルといった海洋国家を経由し、アフリカやアジアへ伝わる中で、中国へも伝来。そこから琉球(現在の沖縄)を経て、17世紀に日本へと渡来します。
日本への伝来当初、さつまいもは琉球から種子島を経て薩摩(現在の鹿児島県)へと伝わり、薩摩藩で盛んに栽培されるようになりました。このため「薩摩から来た芋」という意味で「薩摩芋(さつまいも)」と呼ばれるようになったのです。
江戸時代中期、8代将軍徳川吉宗の治世に起きた「享保の大飢饉(1732年)」では、米や麦などの穀物が凶作となり、全国で深刻な食糧難が発生しました。その際、荒地でも育ちやすく、病害虫にも比較的強いさつまいもが救荒作物として脚光を浴び、幕府をはじめ各地の藩でも栽培が奨励されました。飢饉の危機を救ったこの功績から、さつまいもは全国的に広まり、農村の重要な食糧源となっていきました。
さつまいもはその伝来経路や地域によって、いくつかの異なる呼び名でも知られています。中国(唐)から伝来したことにちなむ「唐芋(からいも)」は九州地方で多く使われ、「甘藷(かんしょ)」という名は特に学術的・行政的な場で使われます。
明治以降の近代では、主食用・家畜用としての利用に加え、焼酎や菓子類などの加工品の原料としての役割も拡大。戦後の食糧難の時代には、主食の代用品として国民の食を支えました。現在では、焼き芋や干し芋、スイートポテトなどのスイーツ用途が主流となり、品種改良も進んでいます。全国的に栽培されている中でも、鹿児島、茨城、千葉などが代表的な産地です。
さらに、世界に目を向けると、中国が現在の最大生産国であり、アジア・アフリカを中心に今なお重要な食料作物とされています。英語では「スイートポテト(Sweet potato)」と呼ばれ、特にアメリカでは感謝祭の料理に欠かせない野菜としても知られています。
栽培カレンダー・期間
- 苗の準備・購入:3〜4月
- 植え付け:4〜5月
- 生育期間:5〜9月
- 試し掘り:9月
- 収穫:9〜11月
さつまいもの栽培は、年間の中でも比較的長い期間を要する作物です。種ではなく「切り苗(つるの一部)」から育てるため、まずは植え付け適期にあたる春先にしっかり準備を整えておくことが大切です。
苗の植え付け時期は、地域によって多少前後しますが、一般的には4月下旬から5月中旬が適期とされます。暖地であれば4月中旬頃から始められますが、関東以北では霜の心配がなくなってから植え付けるようにしましょう。さつまいもは熱帯性植物のため、寒さに弱く、地温が20℃以上になってからでないと根付かず、初期生育が鈍ってしまいます。
植え付けが終わったら、そこからおよそ110日〜150日程度の栽培期間を経て、収穫を迎えることになります。品種によって生育日数は異なりますが、一般的な「紅東(ベニアズマ)」では9月中旬から11月上旬が収穫期の目安です。「紅はるか」や「安納芋」のような貯蔵性や甘味を重視した品種は、比較的長めに育てたほうがよく育ちます。
収穫期に重要なのが、「霜が降りる前に収穫を終える」ということです。さつまいもは霜に非常に弱く、もし地上部や土中で霜に当たってしまうと、芋が腐ってしまう恐れがあります。特に寒冷地では、天候予測と照らし合わせて早めに収穫スケジュールを立てる必要があります。
家庭菜園では、植え付けから約4ヶ月後を目安に「試し掘り」をしてみて、芋の大きさや形を確認しながら収穫のタイミングを調整するとよいでしょう。土の中にある芋の状態は外からは見えないため、このひと手間を加えることで無駄のない収穫が可能になります。
なお、苗の入手タイミングも重要です。ホームセンターや種苗店、ネット通販などでは、例年4月頃から切り苗の販売が始まりますが、人気品種は早々に売り切れることもあるため、事前の情報収集と早めの購入がおすすめです。
栽培スペース
さつまいもは、家庭菜園でも比較的育てやすい野菜ですが、つるが地面を這うようにどんどん伸びていくため、ある程度の広さを確保する必要がある作物です。スペースの確保は、収穫量だけでなく、作業のしやすさにも直結します。
基本の畝(うね)の作り方とサイズ目安
- 畝の幅:60〜70cm程度
→ 通常の1条植え(1列に苗を並べる)の場合はこれくらいで十分です。もし2列で植える場合は、100〜120cmほど確保します。 - 畝の高さ:30cm以上の高畝が理想
→ さつまいもは乾燥気味の土を好むため、水はけのよい高畝にすることがとても重要です。また、芋が地中で横方向に伸びるため、深さと広がりの両方が必要です。 - 株間(苗と苗の間隔):30〜40cm
→ 品種や目的により多少前後しますが、標準的な収量を目指すなら30〜35cmが一般的です。大きな芋を狙いたい場合はやや広めに取るのがコツです。 - 条間(列と列の間隔):80〜100cm
→ 1条植えの場合は不要ですが、複数列で植える場合や畝と畝の間を通路にする場合には、管理作業がしやすいようにスペースを確保しましょう。
スペース確保の工夫
- 防草シートや黒マルチの活用
→ つるが広がってくると雑草の管理が難しくなります。あらかじめ通路や畝の間に防草シートを敷いておくと、つるが絡まず、作業効率が上がります。 - プランター栽培も可能
→ スペースに限りがある場合は、大型プランター(60〜70Lクラス)を使ってベランダでも栽培可能です。ただし、土の量が限られるため、収穫量は少なめになります。品種は小ぶりな芋ができる「パープルスイートロード」などがおすすめです。

一言アドバイス
畝づくりで一番大切なのは「高さと排水性」。水はけが悪いと芋が腐りやすくなるので、少々大げさなくらいの高畝でちょうど良いくらいです。
土づくり・畝づくり・マルチング
さつまいも栽培の成功を左右するのが「土づくり」と「畝づくり」です。他の野菜と比べて必要な肥料は少なく、肥えすぎた土では逆にうまく育たないのが特徴です。そのため、肥料をたっぷり施すというよりは、痩せ気味で水はけの良い環境を整えることがポイントになります。
土壌の性質とpH調整
さつまいもは弱酸性(pH5.5〜6.0)の土壌を好みます。土壌の酸度が強すぎる(pH5.0未満)場合は、植え付けの2週間以上前に苦土石灰を施し、よく耕してpHを調整しましょう。
水はけが悪い粘土質の土では、生育不良や腐敗の原因になります。堆肥や腐葉土を混ぜ込み、通気性と排水性のあるふかふかの土を目指してください。
肥料の基本は「少なめ」
さつまいもは、肥料が多いとつるばかりが伸びて芋が太らない「つるぼけ」になりやすくなります。そのため、元肥(植え付け前に施す肥料)はごく控えめにします。
肥料の施し方(目安):
- 完熟堆肥:2〜3kg/1㎡(土の改良目的)
- 化成肥料(N-P-K=8-8-8程度):20〜30g/1㎡まで
- ※追肥は基本的に不要です
元肥は植え付けの1〜2週間前に施し、よく土と混ぜてなじませておくことが大切です。
畝づくり:高畝で乾燥重視
さつまいもは多湿に弱く、乾燥気味を好むため、高畝にすることで余分な水分を逃がす構造が必要です。特に雨の多い梅雨〜夏場にかけては、地中がジメジメしていると根腐れや病気のリスクが高まります。
畝のサイズ目安:
- 幅:60〜70cm
- 高さ:30cm以上(地域や排水性によって調整)
表面を軽くならして平らにし、植え付けに備えましょう。
黒マルチの活用

高畝ができたら、黒マルチ(黒いビニールフィルム)を畝に被せるとさらに効果的です。
黒マルチの効果:
- 地温の上昇(苗の活着を促進)
- 雑草防止(光を遮断)
- 乾燥の維持(雨による土の跳ね返りも防ぐ)
- 不定根の防止(つるが地表に根を張るのを抑える)
黒マルチは、植え付けの数日前までに張っておくと、地温が安定し、根付きが良くなります。
防草シートの併用(オプション)

畝の間(通路部分)には、防草シートを敷くとさらに管理が楽になります。特につるが広がって地面を覆うようになると、雑草を抜くのが困難になるため、初期の雑草対策が肝心です。
一言アドバイス
「堆肥は少なめ・土はサラサラ・畝は高く・マルチは必須」——これが、さつまいもにとって最高のベッドです。
種まき・苗の植え付け
さつまいもは他の多くの野菜のように「種」や「種芋」から育てるのではなく、「切り苗(つる苗)」と呼ばれる若いつるを土に挿して育てるのが一般的です。この栽培法は、根が簡単に出るさつまいもの特性を活かした方法で、家庭菜園でも広く用いられています。
苗の種類と入手方法


市販されているさつまいもの苗には、主に以下の2種類があります:
- 切り苗(つる苗)
→ 最も一般的。20〜30cm程度のつるを土に挿して使用。節が多いものほど根付きやすくなります。 - ポット苗
→ プランター栽培や、少量育てたい方向け。1株ずつ土付きで売られており、活着しやすいのが特徴です。
苗は、ホームセンターや園芸店、JAの直売所、種苗会社の通販サイトなどで4月上旬〜5月にかけて販売されます。人気の品種(紅はるか・安納芋など)は早く売り切れるため、事前に購入予約しておくのも一つの方法です。
また、前年に育てたさつまいものつるや芋を保管しておき、春に芽出しして自家製の苗を増やすことも可能です。これを「苗取り」と呼びます。
植え付け時期と適した天候

植え付けの時期は、4月下旬〜5月中旬が目安です。地温が20℃以上に達してからでないと苗が根付かず、活着不良を起こします。
おすすめの天候は:
- 曇りの日
- 小雨の前日
- 風の弱い日
晴天で気温が高すぎる日中は避け、朝か夕方の涼しい時間帯に作業すると苗の負担を軽減できます。
植え付けの方法(4つのスタイル)

(斜め上さつまいもの苗は、植え方によって芋の形や収量に違いが出るのが面白いところです。以下の4つが代表的な方法です:
- 斜め植え(一般的)
苗を地面に対して30〜45度の角度で斜めに挿します。
→ バランス良く芋が育ち、乾燥にも強いため家庭菜園に最も適しています。 - 水平植え
苗を横に寝かせるように浅く植え、節が多く土に触れるようにします。
→ 小ぶりな芋がたくさん付くため、数を収穫したいときに。 - 垂直植え
苗をまっすぐ縦に差し込みます。
→ 少数精鋭で大きな芋ができやすいですが、乾燥に弱く初心者向きではありません。 - 船底植え(改良型水平植え)
水平植えよりやや深めに植えて、土を軽く盛る方法。
→ 収量と形のバランスがよく、畝の厚みを活かせます。
植え付け後の管理


植え付けた直後は、苗がまだ根を張っていないため非常にデリケートな状態です。次の点に注意しましょう:
- 根付くまでの数日間は毎日水やり
→ 特に乾燥しやすい黒マルチ使用時は忘れずに。 - 苗がしおれやすい日は遮光対策を
→ 新聞紙や寒冷紗などで日差しを一時的に遮ると活着しやすくなります。 - 活着確認の目安は3〜5日後
→ 苗がシャキッと立ってきたら根付いた証拠。水やりは以降控えめに。
ワンポイントアドバイス
迷ったら「斜め植え」が最も無難で安定した結果が得られます。収穫したい芋のサイズや目的(焼き芋・干し芋など)に合わせて植え方を選ぶのも、家庭菜園の楽しみのひとつです。
水やり
さつまいもは、乾燥に強く水分を好みすぎない性質を持っています。そのため、他の葉物野菜や果菜類に比べて水やりの頻度は少なくてよいのが特徴です。むしろ過剰に水を与えると、芋が腐ったり、つるぼけの原因になったりします。
とはいえ、時期によっては水やりが必要になることもあります。特に植え付け直後の苗の活着期間や、夏場の極端な乾燥時期には適切な水分管理が必要です。
植え付け直後(活着期)の水やり


切り苗を植えた直後は、まだ根が張っていないため、乾燥に非常に弱い状態です。水分が不足すると、苗がしおれたり根付かずに枯れてしまうことがあります。

活着を促すためのポイント:

- 植え付け当日はたっぷりと水やり
- 植え付け後3〜5日程度は毎日朝に水を与える
- 強い日差しがある場合は、寒冷紗や新聞紙などで遮光すると活着が安定しやすい
活着の目安は、苗がシャキッと立って新しい葉が展開し始めるころです。これ以降は基本的に水やりを控えます。
生育期の水管理
活着が済んだ後、さつまいもは乾燥気味の環境を好みます。特にマルチ栽培をしている場合、土の乾燥は自然に防がれているため、ほとんど水やりは必要ありません。
ただし、以下のようなケースでは水やりを検討しましょう:
- 長期間雨が降らず、地表がカラカラに乾いている
- 葉が日中にしおれて戻らない(夕方になっても回復しない)
- 砂地やプランターで育てていて保水性が極端に低い場合
このようなときには、朝のうちにたっぷりと水を与えることで、芋の肥大不良を防ぐことができます。与えるときは表面を濡らす程度でなく、根に届くまでしっかりと浸透させることが大切です。
プランター・鉢植え栽培の注意点
さつまいもは地植えの方が管理が楽ですが、プランター栽培の場合は土の容量が少ない分、乾きやすい傾向があります。そのため、土の表面だけでなく、鉢底までしっかり水が通るような水やりを心がけましょう。
また、鉢皿に水が溜まったままにすると根腐れの原因になります。水を与えた後は余分な水がしっかり流れるよう排水性の良い鉢や底石を使用してください。
一言アドバイス
「乾かし気味」が基本ですが、植え付け後と極端な干ばつ期だけは別。さつまいもは乾燥に強い反面、スタートの水分次第で出来が決まります。
誘引・間引き・整枝
さつまいもの栽培では、トマトやナスのように支柱を立てて枝を整える「整枝」や「誘引」といった作業は基本的に不要です。しかし、放っておくと地表を這うように伸びていく**“つる”の管理**が非常に重要になります。
このつるの管理こそが、さつまいも栽培における「収穫量」や「芋のサイズ」を左右する最大のポイントといっても過言ではありません。
さつまいもの「つる」はどう伸びる?

さつまいもは地面を這うようにぐんぐんとつるを伸ばしていきます。1株から何本ものつるが四方八方に広がり、やがて畝全体を覆うほどに成長します。この性質は雑草抑制にもつながる一方で、管理を怠ると以下のような問題が発生します:
- つるの節から地中に「不定根」が出て、そこにも芋ができてしまう
- 栄養が本来集中すべき株元から分散し、芋が太らない(つるぼけ)
- 雑草が生えても見つけにくく、管理が行き届かない
このような状態を防ぐために行うのが、「つる返し」または「つる上げ」と呼ばれる管理作業です。
つる返し(つる上げ)のやり方とタイミング

「つる返し」は、地面に根を下ろしそうになっているつるを持ち上げて向きを変える、またはひっくり返して地面から切り離す作業です。これにより、余分な不定根の発生を防ぎ、栄養が本来の芋(株元)に集中するようになります。
作業のポイント:
- 植え付けから1ヶ月後(6月下旬〜7月頃)から開始
- 2〜3週間ごとに1回程度のペースで様子を見る
- つるの節から白い根が出てきていたら、その時がつる返しのサイン
- 地面に固定していたつるを軽く持ち上げるだけでOK
- 無理に引っ張ったり、つるを傷つけないよう注意する
※マルチや防草シートを使っている場合、不定根の発生がある程度抑えられるため、つる返しの回数は減らしても大丈夫です。
間引きや整枝は必要?
さつまいもには明確な「整枝」の作業はありませんが、以下のような判断で作業することがあります:
- あまりにもつるが込み合って日当たりや風通しが悪い場合
→ 元気なつるを残して、一部を切り取る「剪定」や「摘心(先端をカット)」をしてもOKです。 - 隣の株までつるが伸びて絡まっている場合
→ 重なった部分を持ち上げ、軽く方向を変えるだけでも十分です。
ただし、葉が光合成して芋に栄養を送っているため、むやみに葉やつるを切りすぎないことが大切です。間引くというよりは「つるの整理整頓」程度に考えると良いでしょう。
一言アドバイス
さつまいもにとって「つるの管理=芋の太り具合」。つるが根を張る前に優しく持ち上げるだけで、収穫の充実度が大きく変わります。
追肥・土寄せ
さつまいもは、他の多くの野菜と比べて追肥も土寄せもほとんど必要としない作物です。むしろ、肥料の与えすぎや過剰な土寄せは逆効果になることがあるため、控えめな管理が基本となります。
追肥は基本的に不要
さつまいもは「つるぼけ(=つるばかり伸びて芋が太らない)」を起こしやすい作物です。この現象の主な原因が肥料の与えすぎ。そのため、元肥(植え付け前の肥料)を少なめに施したら、追肥は基本的にしないのが原則です。
ただし、以下のような場合に限り、軽く追肥を行っても構いません:
- 植え付けから1か月後も苗の生育が悪く、つるの伸びが極端に遅い場合
- 葉色が明らかに薄く、黄ばんで元気がないとき
- 雨続きで肥料が流れてしまったと感じるとき
そのような状況では、化成肥料(8-8-8など)を少量(10g/㎡程度)株元にまく、または液体肥料を水で薄めて葉面散布する程度にとどめましょう。
※それでも改善されない場合は、肥料よりも日照不足や過湿による根傷みの可能性も疑ってください。
土寄せは原則不要、ただし例外も
さつまいもは、じゃがいものように「土寄せを繰り返して芋を増やす」作物ではありません。芋は基本的に株元(植え付けた節のすぐ下)に集中して肥大するため、土寄せによって直接収量が増えることはありません。
しかし、以下のような場面では一時的な土寄せが効果的です:
- 大雨や強風などで土が流れ、芋の一部が地表に出てきてしまった場合
- 畝の表面が極端に乾いてひび割れているとき
- 黒マルチを使用していない栽培で、芋の露出が見られるとき
このような場合には、株元にふんわりと軽く土をかぶせる程度で十分です。過度に盛土すると芋が窒息したり、湿気で傷みやすくなるため注意しましょう。
マルチ栽培の場合は土寄せ不要
黒マルチを使用している場合、地面の保湿と雑草防止ができる上、芋の露出を防ぐ効果もあるため、土寄せの必要性はほぼなくなります。土が流れ出した場合も、マルチの上から追加で土を入れることは避け、マルチの中に軽く補充する程度で構いません。
一言アドバイス
肥料も土寄せも“しない勇気”がさつまいも栽培のカギ。管理の少なさこそが、この作物の最大の魅力です。
収穫


さつまいもは、植え付けからおよそ110〜150日後に収穫を迎えます。多くの品種では9月中旬〜11月上旬が収穫適期とされますが、つるの伸び具合や葉の色だけでは判断が難しいため、「試し掘り」で芋のサイズを確認してから本収穫に入るのが理想です。
収穫に適した天気とタイミング
さつまいもの収穫は、必ず晴れた日を選んで行いましょう。雨の日や土が湿っている状態で掘ると、以下のようなリスクがあります:
- 芋に泥がこびりつき、傷つきやすくなる
- 土がついたまま湿気を帯びると、カビや腐敗の原因になる
- 濡れた芋は乾燥しにくく、追熟前に傷みやすくなる
理想は、2〜3日晴天が続いたあとの乾いた土。地面が適度に乾いている状態で収穫すれば、芋の表面に傷がつきにくく、表皮の乾燥(=キュアリング)にもスムーズに移れます。
収穫の基本手順



- つるを地際でカットし、作業しやすくしておく
- 株元から20cmほど外側にスコップを入れ、土を持ち上げる
- 手で優しく土をかき分けながら芋を探り出す
芋は見た目よりも深く、また横方向にも伸びているため、スコップを近くに入れすぎると芋を傷つけるおそれがあります。
引っ張って抜こうとせず、必ず土ごと持ち上げてから手で収穫するようにしましょう。
芋は洗わない!その理由とは?
収穫後の芋は、絶対に水で洗ってはいけません。理由は以下の通りです:
- 表面の水分が蒸発しにくく、腐敗菌やカビが繁殖しやすくなる
- 表皮が柔らかくなり、傷つきやすくなる
- キュアリング(乾燥処理)による傷の自然治癒が妨げられる
収穫後は、土を軽く払うだけで十分です。泥が気になる場合は、完全に乾いた後に柔らかいブラシや布で落とすようにしましょう。
追熟の必要性と方法(キュアリング)
さつまいもは、収穫した直後よりも、収穫後に1~2か月「追熟」させることで、甘さがぐっと増します。これは、芋の中に含まれるデンプンが糖に分解されていくためで、追熟で劇的に甘さが増すこともあります。
追熟(キュアリング)の手順:

- 収穫した芋を、風通しの良い日陰に2〜3日置いて乾燥させる
→ この段階で表皮が乾き、傷口がふさがります - その後、新聞紙などで1本ずつ包み、
13〜15℃の暗くて湿度のある場所で保存
→ 押し入れ、納戸、発泡スチロール箱などが適所
※保存温度が5℃以下になると低温障害を起こし、芋の内部が黒くなって腐りやすくなるため注意が必要です。
長期保存のコツ
追熟を終えたさつまいもは、1〜2か月は保存可能です。以下のポイントを押さえましょう:
- 芋どうしが直接触れないように新聞紙などで包む
- 冷蔵庫には入れない(低温障害を防ぐため)
- 段ボール箱や米袋などに入れ、暗くて風通しのよい場所に置く
一言アドバイス
収穫は「土が乾いている日」に。芋が濡れたままだと腐りやすくなるので、雨が降る前の収穫は絶対避けて!
芋は洗わず、しっかり乾燥させてから室内へ。甘〜くするには、追熟が大事です!雨天を避け、水洗いをせず、土をはらう程度にしておきましょう。
コメント