炭疽病(たんそびょう)は、野菜、果樹、草花など多くの植物に出るカビ(糸状菌)による病気です。葉や茎、果実に黒褐色の斑点が出て、雨や水はねで広がることがあります。家庭菜園で見つけたときは、まず「症状が炭疽病らしいか」「どこまで広がっているか」「食べる部分に腐敗があるか」を確認します。
結論から言うと、炭疽病は発病してから元通りに治すより、病斑を早く取り除き、雨・水はね・過湿を減らして広げないことが大切です。農薬を使う場合も、作物名と病害名に登録があるものを選び、ラベルの使用方法を守る必要があります。
炭疽病とは
炭疽病は、植物に発生する炭疽病菌の仲間が原因になる病気です。人や動物の感染症でいう「炭疽」とは別に考えます。家庭菜園で問題になるのは、キュウリ、スイカ、メロンなどのウリ科、イチゴ、トマト、枝豆、ホウレンソウ、果樹ではカキなど、作物ごとに出方が違う植物病害です。
病原菌の種類や症状は作物によって異なりますが、共通して注意したいのは、湿度が高い時期、雨が多い時期、風通しが悪い場所、泥はねが多い畑で広がりやすいことです。見た目だけで確定診断は難しいため、ひどい症状や毎年繰り返す場合は、地域の病害虫防除所や農業相談窓口に確認すると安心です。
炭疽病の主な症状
| 出る場所 | よく見る症状 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 葉 | 黄褐色〜黒褐色の丸い斑点。古くなると中心が白っぽくなり、穴があくことがある | 斑点の中央が抜けていないか、葉裏や周囲にも広がっていないか |
| 茎・枝 | 黒褐色や楕円形のへこんだ病斑。枝では亀裂が入ることもある | 病斑の上や周囲が枯れ込んでいないか |
| 果実 | 黒い小斑点が広がり、少しくぼむ。軟化・腐敗・落果につながることがある | 食べる部分が軟らかい、腐敗臭がある、汁が出ている状態ではないか |
| 株全体 | 作物によっては萎れや枯死につながる | 病斑が一部か、株全体に広がっているか |
キュウリの炭疽病では、葉に黄褐色の円形病斑ができ、古くなると中心が白くなって穴があくことがあります。茎や果実では、へこんだ斑点が出ることがあります。病斑部に小さな黒点や、湿度が高いと鮭肉色の粘り気のある胞子塊が見えることもあります。
イチゴでは、ランナーや葉柄に黒褐色で紡錘形の浅くへこんだ病斑が出ることがあり、株全体の萎れにつながる場合があります。炭疽病と萎黄病などは見分けにくいことがあるため、イチゴ苗で疑わしい症状がある場合は、早めに隔離・処分を検討します。
柿の炭疽病の例

上の写真は、甘柿の実に出た炭疽病の例です。カキでは、新梢、幼果、熟した果実、葉柄などに発生します。果実では、最初に黒い小さな斑点が出て、しだいに円形または楕円形のへこんだ病斑になり、早く着色して落ちやすくなることがあります。
検索では「柿 病気 炭疽病 食べられる」という不安も出ています。家庭用としては、黒い斑点だけで判断せず、果肉が軟らかい、腐っている、異臭がある、カビ状のものが広がっている、落果して傷んでいる場合は食べずに処分します。病気の果実を畑や木の下に放置すると、次の感染源になりやすいので、早めに片付けます。
発生しやすい時期と広がり方
炭疽病は、梅雨、長雨、台風後、湿度が高い時期に注意が必要です。雨や水やりの飛沫で胞子が飛び、葉、茎、果実へ移ることがあります。キュウリでは、病原菌が被害茎葉や支柱などに付着して冬を越し、雨や灌水の飛沫で伝染することが知られています。
| 条件 | なぜ危ないか | 家庭菜園でできる対策 |
|---|---|---|
| 雨・長雨 | 水滴で胞子が飛びやすい | 発病葉や落ちた果実を早めに除去する |
| 泥はね | 土や病残さから葉に病原菌が移りやすい | 敷きわら、マルチ、高畝で泥はねを減らす |
| 密植・過繁茂 | 風通しが悪く、葉が乾きにくい | 株間を取り、込み合った葉を整理する |
| 上からの水やり | 病斑から周囲へ水で広がりやすい | できるだけ株元に静かに水をやる |
| 病残さの放置 | 次の感染源になる | 発病葉、果実、枝を畑に残さない |
見つけたときの初動
炭疽病らしい斑点を見つけたら、すぐに全部を抜く前に、範囲を確認します。一部の葉や果実だけなら、その部分を取り除いて様子を見ることがあります。株全体に広がっている、実が腐り始めている、苗が萎れている場合は、感染源を残さない判断が大切です。
| 状態 | 判断の目安 | 作業 |
|---|---|---|
| 葉に小さな斑点が少数 | 初期の可能性。似た病気や傷もある | 該当葉を取り除き、広がるか観察 |
| 病斑が複数の葉に広がる | 周囲へ広がるリスクがある | 病葉を除去し、風通し・水はねを改善 |
| 果実が黒くへこむ、軟化する | 食味・保存性が落ち、感染源にもなる | 食べずに処分。落果も片付ける |
| 株が萎れる、苗が倒れる | 重症の可能性 | 周囲の株と分け、処分を検討する |
取り除いた病葉や病果は、畑にすき込まず、家庭菜園の外へ出します。自治体のルールに従って処分し、作業に使ったハサミや手は清潔にします。雨の直後や葉が濡れているときに触ると、かえって広げることがあるため、できれば乾いた時間帯に作業します。
予防の基本
- 風通しをよくする:株間を詰めすぎず、込み合った葉を整理する
- 泥はねを減らす:敷きわら、マルチ、高畝を使う
- 水やりを見直す:葉や実に強く水をかけず、株元へ静かに行う
- 病残さを残さない:発病葉、落ちた実、枯れた枝を早めに片付ける
- 連作を避ける:同じ作物・同じ科を続けて作らない
- 肥料を偏らせない:窒素過多で茂りすぎると、風通しが悪くなりやすい
予防で大切なのは、病気を完全にゼロにすることではなく、発生しにくい環境にして、出ても広がりにくくすることです。特に梅雨前、長雨前、台風後は、葉の込み具合、泥はね、落ちた果実や枯れ葉を確認します。
農薬を使う場合の注意
炭疽病に使える殺菌剤は、作物ごとに登録内容が違います。たとえば「炭疽病に効く」と書かれていても、育てている作物名に登録がなければ使えません。使用前には、農薬登録情報提供システムや製品ラベルで、作物名、病害名、希釈倍数、使用時期、使用回数、収穫前日数を確認します。
家庭菜園では、薬剤名だけを見て選ぶより、「自分の作物に使えるか」「食べる部分の収穫まで何日空ける必要があるか」を先に確認します。登録内容は変わることがあるため、古い記事や古い記憶だけで判断しないようにします。
よくある疑問
炭疽病の野菜や柿は食べられますか?
病斑がある作物は、家庭用でも無理に食べない方が安心です。特に果実が軟らかい、腐っている、においが変、カビ状のものが広がっている、落ちて傷んでいる場合は処分します。見た目が軽い斑点でも、原因が炭疽病とは限らないため、迷うものは食べない判断が安全です。
炭疽病は土からうつりますか?
作物によって違いますが、病原菌は被害葉、茎、枝、落ちた果実、資材などに残り、雨や水はねで広がることがあります。土そのものだけで考えず、病残さ、支柱、マルチ周辺、落ち葉や落果を感染源として見ます。
発病したら農薬で治りますか?
症状が進んだ部分を元通りに戻すのは難しいです。農薬は主に広がりを抑える目的で使うと考え、発病部の除去、風通し改善、水はね対策と組み合わせます。農薬を使う場合は、必ず現在の登録内容とラベルを確認します。
関連動画
次に読むと役立つ記事
- 野菜の病気について:病気が出る条件や感染経路をまとめて確認できます。
- うどんこ病の特徴と対策:白い粉状の症状と炭疽病の黒い斑点を見比べたいときに役立ちます。
- べと病の特徴、発生条件と対策:キュウリなどで葉の病斑を見分けるときの比較になります。
- さび病の特徴、予防と対策:葉の斑点・胞子症状を別の病気と比較できます。
参考にした公的・専門情報
- 島根県「キュウリ べと病、炭疽病」:キュウリでの症状、伝染、雨や水はねとの関係を確認しました。
- 島根県「カキの炭疽病」:カキの果実・新梢の症状、降雨時の胞子形成、発生条件を確認しました。
- 農研機構「病害の防除対策(イチゴ)」:イチゴ炭疽病の病斑、胞子塊、発病株の扱いを確認しました。
- 農林水産省「農薬登録情報提供システム」:農薬登録情報の確認先として参照しました。
- FAMIC「農薬の使用についての質問」:作物名・病害虫名による農薬登録確認と、ラベル・最新情報確認の考え方を参照しました。
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